行政書士が辞任するのはどんなときか 弊所が業務を途中で終える場合と手順

弊所では、ご依頼をお受けした後でも、一定の事情があるときは業務を途中で終了し、辞任させていただくことがあります。

辞任はご依頼者さまにとって大きな影響があるため、弊所は安易に行いません。そのうえで、どのような場合に辞任を検討するのかをあらかじめ公開しておくことが、ご依頼前の安心と、ご依頼後の円滑なやり取りにつながると考えています。この記事では、行政書士が辞任できる法的な根拠、弊所が辞任を検討する具体的な場面、辞任するときの手順をご説明します。

この記事で確認すること

1 行政書士はいつでも辞められるのか
2 弊所が辞任を検討する場合
3 辞任するときの手順
4 辞任した後も変わらないこと

1 行政書士はいつでも辞められるのか

結論から申し上げると、行政書士とご依頼者さまとの契約は委任(準委任)契約にあたり、法律上はどちらからでも解除できます。ただし、時期や理由によっては責任が生じるため、無制限に辞められるわけではありません。

受任の段階では、依頼に応ずる義務がある

行政書士法第11条は、行政書士は正当な事由がある場合でなければ依頼を拒むことができないと定めています。行政書士の業務には公共性があるため、お引き受けすることが原則です。

一方で、日本行政書士会連合会が定める倫理規範では、依頼の目的・内容・方法に不正の疑いがある場合には受任を拒否しなければならないとされています。不正のおそれがある依頼をお断りすることは、行政書士の義務でもあります。

受任の後は、委任契約の解除のルールに従う

民法第651条第1項により、委任契約は各当事者がいつでも解除できます。ただし同条第2項により、相手方に不利な時期に解除した場合などは、解除した側が損害を賠償しなければなりません。この賠償は、やむを得ない事由があったときは不要とされています。

つまり、行政書士が辞任するときは、ご依頼者さまに不利益が生じない時期と方法を選ぶこと、そして辞任に相応の理由があることが求められます。弊所が辞任の基準を明らかにしているのは、このためです。

この記事でご説明するのは、弊所の一般的な考え方です。ご契約時の特約や、各サービスの内容として、辞任・解約・報酬の精算について別に定めがある場合は、そちらの定めが優先します。

2 弊所が辞任を検討する場合

弊所が辞任を検討するのは、次のような場合です。いずれも一度の行き違いで直ちに辞任するものではなく、事情をうかがい、改善をお願いしたうえで判断します(例外は「3 辞任するときの手順」でご説明します)。

辞任を検討する場合 具体的な例
事実と異なる書面の作成を求められた ご本人のものではないアカウントを本人のものとして申し立てる、乗っ取りの事実がないのに乗っ取りと記載する
目的や方法が違法・不正と判明した 他人のアカウントへの不正なアクセス、なりすまし、利用規約を回避する目的での申立て
業務範囲を超える対応を求められ続けた 相手方との交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続
資料のご提供や連絡が途絶えた 本人確認資料や経緯のご説明がいただけず、長期間業務を進められない
報酬のお支払いがない 契約で定めた報酬や実費が、ご連絡しても支払われない
社会通念上許容される範囲を超える言動があった 暴言や威圧的な言動、深夜・早朝を含む過度な連絡の強要、誹謗中傷の投稿、契約にない作業や不当な返金の強要
ご依頼者さまの身元が確認できない 本人確認書類のご提出やオンライン面談に応じていただけない、氏名や連絡先が書類と一致しない
信頼関係が維持できなくなった 書面と矛盾する行動を相談なく取る、同じ件を複数の事務所に並行して依頼する

以下、それぞれの場合について補足します。

事実と異なる書面の作成を求められた場合

申立書や通知書は、事実に基づいて作成するものです。事実と異なる内容を求められた場合は、その書面を作成できません。ご依頼後に申告内容と異なる事実が判明し、訂正にご協力いただけない場合も同様です。

依頼の目的や方法が違法・不正であると判明した場合

目的や方法に不正があると判明した場合は、業務を継続できません。「1 行政書士はいつでも辞められるのか」でご説明したとおり、これは行政書士として守るべき規律でもあります。

弊所の業務範囲を超える対応を求められ続けた場合

弊所の業務は、事実関係と証拠の整理、申立書面・通知書面等の作成までです。相手方との交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続は、弁護士の業務です。これらの対応を繰り返し求められ、ご説明してもご理解いただけない場合は、弁護士へのご相談をおすすめしたうえで辞任することがあります。

必要な資料のご提供や連絡が途絶えた場合

書面の作成には、ご本人確認資料、画面の記録、経緯のご説明などが欠かせません。ご連絡を差し上げても長期間ご返答がなく、業務を進められない状態が続く場合は、辞任のご連絡をすることがあります。

報酬のお支払いがない場合

契約で定めた報酬や実費のお支払いがなく、ご連絡しても解消されない場合は、業務を停止し、辞任することがあります。

社会通念上許容される範囲を超える言動があった場合

ご不満やご要望を率直にお伝えいただくことは、もちろん歓迎しています。問題になるのは、その伝え方や求める内容が社会通念上許容される範囲を超える場合です。

2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法と厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)により、事業主にはカスタマーハラスメントへの対策が義務付けられました。弊所もこの考え方に沿って対応します。

ご依頼者さまの身元が確認できない場合

日本行政書士会連合会の倫理規範では、行政書士は業務をお受けするにあたり、ご依頼者さまがご本人であることを面談等の適切な方法で確認しなければならないとされています。SNSアカウントの手続では、ご本人になりすました第三者からの依頼を防ぐためにも、この確認が欠かせません。

本人確認書類のご提出やオンライン面談に応じていただけない場合や、お伺いした氏名・連絡先が書類と一致せず、ご説明もいただけない場合は、業務を進められないため辞任します。

信頼関係が維持できなくなった場合

作成した書面の内容と矛盾する行動を弊所に相談なく取られる、同じ件を複数の事務所に並行して依頼し内容の異なる申立てが行われるなど、業務の前提となる信頼関係が損なわれた場合です。

3 辞任するときの手順

弊所が辞任するときは、原則として次の順で進めます。

1気になる点を具体的にお伝えし、改善をお願いします(メールなど記録に残る方法で行います)。

2改善が見られない場合は、辞任の理由と時期を書面またはメールでお知らせします。

3お預かりした資料をご返却し、作成途中の書面の扱いをご説明します。

4報酬を精算します。業務の進み具合に応じて計算し、未着手の部分にあたる金額はご返金します。

5必要に応じて、弁護士など他の専門家へのご相談先をご案内します。

ただし、暴力や脅迫にあたる言動があった場合や、違法な目的が明らかになった場合は、改善のお願いを経ずに直ちに辞任し、必要に応じて警察等に相談します。

また、申立ての期限が迫っている時期など、ご依頼者さまに不利な時期の辞任はできる限り避け、引継ぎに必要な期間を考慮します。

4 辞任した後も変わらないこと

辞任した後も、弊所はご依頼を通じて知り得た秘密を守ります。行政書士法第12条により、行政書士は正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはならず、この義務は行政書士でなくなった後も続きます。

ご相談の経緯やアカウントの情報、お預かりした証拠の内容を第三者に開示することはありません。業務記録は、秘密とプライバシーに配慮して保管・廃棄します。

まとめ

ここに挙げた場面で実際に辞任に至るのは、年間に数件あるかないかです。ほとんどのご依頼者さまとは、最後までご一緒に業務を進めています。

辞任の基準を公開しているのは、ご依頼者さまと弊所の双方が安心して手続に向き合えるようにするためです。ご不明な点は、ご依頼前のご相談の段階でお気軽にお尋ねください。

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参考資料

行政書士法(日本法令外国語訳データベース)
民法(e-Gov法令検索)
行政書士倫理(日本行政書士会連合会)
事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(厚生労働省)

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執筆・運営について

リーリエ行政書士事務所

SNSアカウントの凍結解除・乗っ取り復旧を専門とする行政書士事務所です(東京都行政書士会所属)。弊所の業務範囲は、事実関係と証拠の整理、申立書面・通知書面・開示請求書面等の作成までです。交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続は行っていません。

事務所 リーリエ行政書士事務所
取扱分野 SNSアカウントの凍結・乗っ取りからの復旧、SNSアカウント運用サポート
公開 2026年10月28日