LINE乗っ取りの「コンテストに投票して」 知人からのメッセージで認証番号を入力してしまったときの対処
しばらく連絡を取っていなかった知人から、「親戚の子が作品コンテストに出ているので、投票してもらえませんか」とメッセージが届く。リンクを開くと投票ページが現れ、投票にはLINEでのログインが必要だと案内される。見慣れた緑の画面に電話番号とパスワードを入れ、届いた認証番号を打ち込んだ次の瞬間から、自分のLINEは自分のものではなくなります。
この「投票」を口実にした乗っ取りは、LINEヤフーや各地の警察が繰り返し注意を呼びかけている手口です。乗っ取られたアカウントは、LINEでつながっている友だちへの送金の要求や、同じ投票依頼の拡散に使われ、被害は持ち主一人にとどまりません。同じ投票の依頼はInstagramやXのDMでも確認されており、LINEだけの問題ではありません。
リーリエ行政書士事務所は、SNSアカウントの凍結解除・乗っ取りからの復旧を専門とし、不正アクセス事案への対応にも関わってきました。この記事では、手口の仕組みと対処の手順に加えて、送金被害や、乗っ取られたアカウントの持ち主の責任をめぐる論点まで整理します。
LINEの画面の構成や設定項目の名前は、アプリの更新によって変わることがあります。この記事の説明は執筆時点の情報にもとづくものです。お手元の画面と異なる場合は、LINEヘルプもあわせてご確認ください。
この記事で確認すること
1 「投票して」から乗っ取りまでの流れ
2 なぜ「投票」が入口に選ばれるのか
3 偽画面は「見分けない」
4 入力してしまったときの対処
5 友だちから送金を求められたら
6 乗っ取られる前にしておく設定
7 インスタやXでも同じ手口が使われる
8 法的な論点と対立する考え方
9 リーリエの考察
10 よくある質問
1 「投票して」から乗っ取りまでの流れ
この手口は、一人の乗っ取りが次の乗っ取りを生むように組み立てられています。警察が公表している注意喚起の資料をもとに、流れを整理します。
| 段階 | 起きていること |
|---|---|
| 1 知人から投票の依頼 | すでに乗っ取られた知人のLINEや、InstagramなどほかのSNSのアカウントから、コンテストへの投票を頼むメッセージとURLが届く |
| 2 偽の投票ページ | 投票ページから、LINEのログイン画面に似せた偽の画面に誘導される |
| 3 登録情報と認証番号の入力 | 電話番号、パスワード、届いた認証番号を入力すると、その情報で第三者がアカウントを引き継ぐ |
| 4 友だちへの二次被害 | 乗っ取られたアカウントから、友だちに送金の要求や同じ投票の依頼が送られる |
警察の資料では、乗っ取られたLINEから友だちにPayPayでの送金を求める詐欺も確認されています。最初に乗っ取られる人は、次の被害者にとっての「信頼できる知人」になるという構造が、この手口の核心です。
2 なぜ「投票」が入口に選ばれるのか
投票の依頼は、頼まれた側にとって損がなく、断る理由を見つけにくい頼み事です。お金や個人情報を求められれば警戒する人も、「一票入れるだけ」なら気軽に応じます。「アンバサダー候補になった」「親戚の子の作品が出ている」といった口実は、相手を応援したいという善意に訴えかけます。
さらに、依頼の送り主は本物の知人のアカウントです。名前もアイコンもふだんどおりで、過去のトークの履歴もそのまま残っています。文面に多少の違和感があっても、送り主への信頼が、内容への疑いを上回ってしまうのです。
手口は移り変わります。投票のほかにも、「乗っ取られたので解除に協力してほしい」「安全確認のため再認証が必要」といった口実で、同じ偽画面に誘導する例が警察から報告されています。口実が何であれ、行き着く先は登録情報と認証番号の入力です。
3 偽画面は「見分けない」
偽のログイン画面は、本物とほとんど区別がつかない精度で作られています。URLの細かな違いや画面の不自然さで見抜こうとする方法は、手口が巧妙になるほど通用しなくなります。
LINEヤフーは、偽画面を見分けようとするのではなく、自分で引き継ぎや登録情報の変更をするとき以外は、認証番号を絶対に入力しないことを呼びかけています。それ以外の場面で登録情報や認証番号の入力を求められたら、すべて詐欺と考えてよい、という考え方です。
投票、プレゼントの受け取り、アンケート、本人確認など、どのような理由であっても、外部のサイトでLINEの電話番号・パスワード・認証番号を入力する必要が生じることはないと考えてください。迷ったら入力せず、依頼してきた本人に電話など別の手段で確かめます。
4 入力してしまったときの対処
入力してしまったと気づいたら、LINEがまだ使えるかどうかで対処が分かれます。どちらの場合も、最初に記録を残すことを忘れないでください。
LINEがまだ使える場合
| 順番 | 具体的にすること |
|---|---|
| 1 記録を残す | 投票を依頼してきたトーク、偽ページのURL、LINE公式アカウントから届いたログイン通知を、スクリーンショットで保存する |
| 2 パスワードを変える | ほかのサービスで使っていない、新しいパスワードに変更する |
| 3 ログイン許可をオフにする | パソコンなど別の端末からのログインを受け付けない設定にする |
| 4 身に覚えのない端末をログアウトさせる | ログイン中の端末を確認し、見覚えのないものをログアウトさせる |
| 5 送られたメッセージを取り消す | 自分の意図しないメッセージが送られていれば送信を取り消し、相手には別の手段で事情を伝える |
LINEが使えなくなった場合
突然「アカウントからログアウトされました」と表示された場合は、まず再ログインを試します。アカウントの削除をうながす表示が出て操作してしまった場合は、登録している電話番号とパスワードで引き継ぎを試します。それでも戻れない場合は、二次被害を防ぐため、LINEヘルプから問い合わせてください。
あわせて、家族や友人に、電話や別のSNSなどLINE以外の手段で「LINEが乗っ取られたので、送金の依頼や投票の依頼には応じないでほしい」と伝えます。アカウントを取り戻すことより、周りへの連絡のほうが急ぐ場面も少なくありません。
金銭の被害が出ている場合や、なりすましが続いている場合は、警察にご相談ください。緊急でないご相談は、警察相談専用電話「#9110」で受け付けています。技術的な対処の相談は、IPA(情報処理推進機構)の情報セキュリティ安心相談窓口でも受け付けています。
5 友だちから送金を求められたら
家族や友人から、突然LINEで送金を頼まれたら、送る前に必ず本人に確かめてください。確かめる手段は、電話、ビデオ通話、対面など、テキストのメッセージ以外に限ります。乗っ取られたアカウントのトーク画面で「本当にあなた?」と尋ねても、答えるのは乗っ取った第三者です。
「いま電話に出られない」「急いでいる」「ほかの人には言わないで」といった言葉は、別の手段での確認を避けさせるための典型的な言い回しです。急かされるほど、一度手を止めて確かめる理由になります。
すでに送金してしまった場合は、送金に使ったサービスの窓口と警察に、できるだけ早く連絡してください。送金の日時、金額、相手の表示名などを記録しておくと、相談がスムーズに進みます。
6 乗っ取られる前にしておく設定
ふだんから確認しておきたい設定は、次の四つです。
1パソコンやスマートウォッチなど、スマートフォン以外でLINEを使わないなら、「ログイン許可」をオフにしておきます。
2アカウントを取り戻す手段を確保するため、「設定」の「アカウント」から、GoogleアカウントまたはApple IDを連携しておきます。
3パスワードは、ほかのサービスと使い回していないものにします。
4家族の間で「送金や投票の依頼がLINEで来たら、必ず電話で確かめる」と決めておきます。
四つ目は設定ではありませんが、効果の大きい対策です。とくに高齢の家族は、子や孫を名乗る依頼に応じやすい傾向があります。確かめることを失礼と感じさせないよう、家族の決まりにしておくことが、いちばん確実な防ぎ方です。
7 インスタやXでも同じ手口が使われる
投票の依頼は、LINEのほか、InstagramやX、FacebookのメッセージやDMからも届きます。大阪府警察も、LINE、Instagram、Facebookなどで投票を求めるメッセージが確認されているとして、「認証コードの入力」や「届いたURLの転送」を求められたら危険だと注意を呼びかけています。
InstagramやXのアカウントそのものが狙われる場合は、LINEとは求められるものが少し変わります。偽のログイン画面でユーザー名とパスワードを入れさせるほか、「投票に必要だから、届いたコードを送って」「届いたリンクを転送して」と頼む形もあります。このコードやリンクは、多くの場合、あなたのアカウントのログインやパスワード再設定のために送られたものです。相手に渡した時点で、アカウントを明け渡すことになります。
| サービス | 狙われる情報 | まず確かめたい設定 |
|---|---|---|
| LINE | 電話番号、パスワード、認証番号 | ログイン許可のオフ、GoogleアカウントまたはApple IDの連携 |
| ユーザー名、パスワード、ログインやパスワード再設定のためのコードやリンク | 二段階認証、アカウントセンターの「ログイン済みの場所」、登録しているメールアドレスと電話番号 | |
| X | ユーザー名、パスワード、確認コード | 二段階認証、ログイン中の端末(セッション)、連携している外部アプリ |
*設定項目の名前や場所は、アプリの更新によって変わることがあります
乗っ取られたInstagramやXのアカウントは、フォロワーへの同じ投票依頼の拡散や、知人を装った送金の依頼、投資や副業の勧誘などに使われます。フォロワーの多いアカウントほど、一度に届く範囲が広がります。事業や店舗のアカウントであれば、お客様に向けて不審な発信がされることになり、被害は信用の問題にまで及びます。
InstagramとXには、それぞれ乗っ取り被害にあった場合の回復の手続が用意されています。ログインできなくなったときは、各サービスのヘルプセンターにある乗っ取り被害の案内から申請します。いつ、どのメッセージから、何を入力したかを時系列で示せるようにしておくことが、ここでも大切です。
8 法的な論点と対立する考え方
偽のログイン画面を作って認証情報を入力させる行為や、他人の認証情報でログインする行為は、不正アクセス禁止法で禁じられています。この点に争いはありません。一方で、被害がどこまで広がったときに、誰がどこまで負担するのかについては、考え方が分かれます。
論点1 乗っ取られたアカウントの持ち主は、友だちの被害に責任を負うか
責任を問う公式に繰り返し注意が呼びかけられている状況で認証番号を入力したのであれば、被害の拡大に手を貸した面があり、一定の注意義務を負うと考える余地があります。
慎重な立場持ち主自身が犯罪の被害者であり、知人を装った巧妙な手口を見抜けなかったことに責任を負わせるのは酷です。責任を負うべきなのは乗っ取った犯人です。
論点2 認証番号の入力は利用者の自己責任か、仕組みの問題か
事業者の対策を重視認証番号と登録情報だけで別の端末に引き継げる仕組みそのものが狙われており、異常な引き継ぎの検知や、入力の場面での警告をさらに強めるべきです。
利用者の判断を重視事業者は認証番号を外部で入力しないよう明確に案内しており、手続を重くすれば正当な機種変更まで不便になります。最後の防波堤は利用者の判断です。
論点3 コード決済で送ったお金の救済をどう考えるか
救済の拡充を重視振り込め詐欺救済法は、銀行などの預金口座を使った被害を前提とした仕組みです。送金の手段がコード決済に移っている以上、同じような救済の枠組みを広げるべきです。
慎重な立場即時に送れることがコード決済の価値であり、送金の取消しや凍結を広く認めると、正当な取引の安定が損なわれます。まずは事業者ごとの補償や不正検知で対応すべきです。
論点4 乗っ取られたアカウントを運営が止めることの是非
迅速な停止を重視乗っ取られたアカウントは友だちへの詐欺の道具になるため、利用状況から疑わしいものは素早く止めるべきです。LINEヤフーも、乗っ取られたアカウントの利用停止を行っているとしています。
慎重な立場停止によって、被害者である持ち主がトークの履歴や人とのつながりを失うことがあります。誤った判定もありうる以上、本人が取り戻すための手段を十分に用意すべきです。
*それぞれの立場で示されている考え方を整理したもので、特定の結論を支持するものではありません。個別の事案での判断は弁護士にご相談ください
どの論点でも、被害を防ぐ目的は共通しています。分かれているのは、利用者の注意、事業者の仕組み、法による救済のうち、どこに重心を置くかという点です。
9 リーリエの考察
この手口が盗んでいるのは、アカウントそのものよりも、そのアカウントに積み重なった人間関係の信頼です。乗っ取った第三者が欲しいのは、トーク画面の向こうにいる友だちが「この人の頼みなら」と応じてくれる関係であり、アカウントはそのための道具にすぎません。だからこそ被害は、持ち主の手を離れて友だちへと広がっていきます。
乗っ取りのご相談を受けていて感じるのは、被害に遭った方が最も重く受け止めているのは、アカウントを失ったことよりも、自分の名前で友だちに詐欺のメッセージが送られたことだという点です。その意味で、乗っ取りに気づいたときに最初にすべきことは、復旧の手続より先に、周りの人に別の手段で知らせて、次の被害を止めることだと私たちは考えています。
もう一つ見落とされやすいのは、SNSをまたいだ連鎖です。投票の依頼は、乗っ取られたInstagramやXのアカウントから届くこともあります。一つのSNSの乗っ取りが、別のSNSの乗っ取りの入口になるということです。LINEだけを守っていても十分ではなく、使っているSNSすべてでパスワードの使い回しをやめ、二段階認証を設定しておくことが、自分を守ると同時に、友だちを守ることにもつながります。
そして、運営への申告で回復を目指す場面では、いつ、どの画面で、何を入力し、その後に何が起きたかを時系列で示せるかどうかが、結果を左右します。慌てて操作を重ねる前に、トークの画面、偽ページのURL、届いた通知を残しておく。気づいた時点で残した記録が、後から経緯を説明するほぼ唯一の手がかりになります。
10 よくある質問
Q投票ページのリンクを開いてしまいました。それだけで乗っ取られますか。
Aこの手口では、登録情報や認証番号を入力しなければ、乗っ取りは成立しない仕組みになっています。入力していなければ、ページを閉じてトークを削除し、送り主の知人には別の手段で乗っ取られている可能性を伝えてください。
QInstagramのDMで、知人から「投票に必要だから、届いたコードを送って」と頼まれました。
A送らないでください。そのコードは、あなたのアカウントのログインやパスワード再設定のために届いたものである可能性が高く、渡すとアカウントを乗っ取られます。知人のアカウントもすでに乗っ取られているおそれがあるため、別の手段で本人に知らせてください。
Q認証番号を入力してしまいましたが、まだLINEは使えます。
Aすぐに記録を残したうえで、パスワードの変更、ログイン許可のオフ、身に覚えのない端末のログアウトを行ってください。手順は4章のとおりです。
Q知人のLINEが乗っ取られているようです。どうすればよいですか。
Aトークでは返信せず、電話など別の手段で本人に知らせてください。共通の友人にも、そのアカウントからの依頼に応じないよう伝えると、被害の広がりを防げます。
Q乗っ取られたLINEの依頼に応じて、送金してしまいました。
A送金に使ったサービスの窓口と警察に、できるだけ早く連絡してください。送金の日時、金額、相手の表示名、やり取りのトークを記録しておくと、相談がスムーズに進みます。
Q乗っ取られたアカウントの回復を相談できますか。
Aご相談いただけます。経緯をうかがい、証拠を整理したうえで、運営への申立ての書面を作成します。お問い合わせの際に、乗っ取りに気づいた日時と、いつから何が起きているかを添えていただくと、状態の確認をスムーズに進められます。
まとめ
「コンテストに投票して」というメッセージは、知人への善意と信頼を入口にした乗っ取りの手口です。偽画面を見分けようとするのではなく、自分で引き継ぎや登録情報の変更をするとき以外は、認証番号を入力しない。この一点を守るだけで、被害の大半は防げます。
入力してしまったときは、記録を残し、パスワードの変更とログイン許可のオフを急ぎ、周りの人には別の手段で知らせる。そして、友だちから送金を頼まれたら、テキスト以外の手段で必ず本人に確かめる。乗っ取りは一人の問題ではなく、つながっている人たち全体の問題です。
乗っ取りに気づいた方、すでにログインできなくなっている方は、まずはトークの画面と届いた通知の記録を手元にそろえてください。
参考にした公表資料
アカウント乗っ取り事案が多発!!金銭的被害も確認(山口県警察本部サイバー犯罪対策課)
情報セキュリティ安心相談窓口(独立行政法人情報処理推進機構)
不正アクセス行為の禁止等に関する法律、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(e-Gov法令検索)
AUTHOR & SUPERVISION
執筆・運営について
リーリエ行政書士事務所
SNSアカウントの凍結解除・乗っ取り復旧を専門とする行政書士事務所です(東京都行政書士会所属)。弊所の業務範囲は、事実関係と証拠の整理、申立書面・通知書面・開示請求書面等の作成までです。交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続は行っていません。
| 事務所 | リーリエ行政書士事務所 |
|---|---|
| 取扱分野 | SNSアカウントの凍結・乗っ取りからの復旧、SNSアカウント運用サポート |
| 公開 | 2026年11月2日 |


