年明けの凍結、6月の解除の波 2026年のXを相談の現場から整理【2026年秋更新】
2026年のXは、アカウントの凍結やロックをめぐって、例年になく動きの多い一年になっています。年明けには「身に覚えがない」というご相談が集中し、6月には、そのとき止まったアカウントが時間差で戻り始めました。夏には総務省がX社を含む事業者に勧告を出し、10月には国内で個人情報の漏えいが相次いでいます。
リーリエ行政書士事務所は、事業会社の側で凍結や利用停止に関する書面を受け取り、対応方針を検討する審査業務に関わってきました。いまは反対に、ご依頼者さまの事情をまとめた書面を、プラットフォームに宛てて作る側にいます。この記事では、書面を受け取る側と送る側の両方を経験した立場から、2026年1月から10月までに弊所に届いたご相談の推移と、公的機関が公表した動きを重ね合わせて整理します。
なお、弊所の対応経験から見えた傾向は、X社の内部で何が起きていたかを示すものではありません。解除を保証するものでもないことを、最初にお断りしておきます。
この記事で確認すること
1 年明けに集中した「身に覚えのない凍結」
2 6月の解除の波と、3〜5か月という間隔
3 書面のあとに届く本人確認の連絡
4 総務省の勧告と、日本の制度の動き
5 EUの動き
6 10月の個人情報漏えいと、乗っ取りへの備え
7 よくある質問
8 弊所でお手伝いできること
2026年の動きの全体像
はじめに、弊所に届いたご相談の動きと、公的機関の動きを一つの表にまとめます。
| 時期 | 弊所に届いたご相談・対応の動き | 公的機関の動き |
|---|---|---|
| 2025年11月〜12月 | 外部ツールや非公式アプリの利用者を中心に、凍結のご相談が増える | 欧州委員会が、X社のDSA(デジタルサービス法)違反を認定 |
| 2026年1月〜3月 | 「普通に使っていただけ」という凍結のご相談が集中する | ― |
| 3月下旬〜4月 | 復旧したという報告と、再び止まったという報告が入り混じる | ― |
| 5月 | ― | 情報流通プラットフォーム対処法にもとづく、初めての運用状況の公表期限(5月末) |
| 6月 | 20日前後から、年明けに書面を送った案件で解除のご連絡が相次ぐ | ― |
| 7月 | 書面の送付から1週間ほどで、本人確認の連絡が届く案件が増える | 欧州委員会がX社の行動計画を承認(16日)。総務省がX社を含む5社に勧告(24日) |
| 8月 | ― | 勧告にもとづく再公表と改善計画の提出期限(31日) |
| 10月 | ― | 個人情報の漏えいを受け、各機関が注意喚起(7日〜9日)。勧告にもとづく初回の進捗報告期限(30日) |
*弊所の欄は対応経験にもとづく傾向で、X社の内部の動きを示すものではありません
1 年明けに集中した「身に覚えのない凍結」
2026年1月から3月にかけて、弊所へのご相談はこの年でもっとも多い時期を迎えました。目立ったのは、「普通に使っていただけなのに、ある朝ログインできなくなった」というご相談です。長く運用してきた個人のアカウントや、店舗・企業の公式アカウントも例外ではありませんでした。いわゆる「春のBAN祭り」と呼ばれた時期です。
お話をうかがうと、規約違反にあたる投稿がないかわりに、操作の並び方に共通点が見えることがありました。短い時間に続けたフォローやいいね、同じ定型のあいさつを多くの相手に返していたこと、連携アプリが動かしていた自動の操作などです。ご本人にとっては自然な使い方でも、機械的に見える動きが、自動の判定に引っかかったと考えられるケースです。
受け取る側から見た「身に覚えがない」
審査業務で書面を受け取っていたとき、「身に覚えがない」「普通に使っていた」とだけ書かれた申し立ては、判断の材料になりにくいものでした。読む側が確かめたいのは、指摘されたルールのどの点に、なぜ当てはまらないのかです。いつから、どんな目的で、どのくらいの頻度で使っていたのか。誤解されそうな操作があったなら、それはどういう事情だったのか。この時期にご依頼いただいた書面では、通知にあるルールの名前を起点に、ご本人の使い方を時系列で並べ直すことから始めました。
2 6月の解除の波と、3〜5か月という間隔
6月20日前後から、弊所に「解除されました」というご連絡が相次ぎました。多くは、年明けの1月から3月に通知書面や異議申し立ての書面を送っていた案件です。凍結からおよそ3〜5か月という間隔でした。
この時期の解除が、個々の書面の結果なのか、X社の側でまとめて見直しが行われた結果なのかは、外からはわかりません。両方が混ざっていると見るのが自然だと考えています。ただ、手元の案件を振り返って一つ言えるのは、戻ってきたアカウントには、誤った凍結だという申し立ての記録が残っていたということです。何も出さずに待っていたアカウントより、事情を伝えた記録があるアカウントのほうが、見直しの対象になりやすいのは自然なことです。
凍結からしばらく時間がたっていても、それだけで手遅れとはかぎりません。一方で、待つあいだに同じ端末で新しいアカウントを作ると、凍結の回避とみなされるおそれがあります。待つ時間は、記録を整え、申し立ての中身を見直す時間に充ててください。
3 書面のあとに届く本人確認の連絡
7月ごろから、もう一つの傾向がはっきりしてきました。X社の米国本社に宛てて書面を送ったあと、1週間ほどで、アカウントに登録しているメールアドレスにX社から連絡が届く案件が増えたのです。多くはパスポートなどによる本人確認を求める内容で、確認が済むと解除に進むという流れでした。解除までの期間は、早いもので14日ほど、時間がかかるものでも3〜4か月ほどでした。
この流れから見えてくるのは、書面を送ったあとに止まりやすいのが、審査そのものではなくご本人の側の本人確認だということです。登録しているメールアドレスを今は見ていない、身分証の名前とアカウント名がつながらない、といった事情で、連絡が届いていても先に進めないことがあります。
書面を出す前に、次の三点を確かめておくことをおすすめしています。
1アカウントに登録しているメールアドレスを、今も受信できること
2パスポートなど、記載事項がはっきり読める身分証を用意できること
3アカウント名が本名と違う場合に、屋号やペンネームとご本人のつながりを示せる資料があること
本人確認を装った偽のメールも出回っています。身分証の画像を送る前に、差出人がX社のドメインか、それまでのやり取りへの返信として届いているかを確かめてください。メールのリンクから身分証をアップロードする前に、一度手を止めることが大切です。
4 総務省の勧告と、日本の制度の動き
2026年は、利用者からは見えにくいところで、日本の制度も動いた年でした。
情報流通プラットフォーム対処法と、Xの指定
2025年4月1日に、情報流通プラットフォーム対処法が施行されました。総務省は同年4月30日、X社を、利用者の多い「大規模特定電気通信役務提供者」に指定しています。指定された事業者には、削除の申出への迅速な対応に加え、削除などの基準を作って公表すること、運用の状況を年度ごとに公表することが義務づけられています。
凍結に関わるところでは、二つの点が見逃せません。一つは、アカウントの提供を止める措置について、その基準を「できる限り具体的に」定めるよう求められていることです(努力義務)。もう一つは、毎年の運用状況の公表項目として、削除とアカウント停止の別、不服申立ての件数、それを受けて措置を撤回した件数などが総務省の資料で示されていることです。
7月24日の勧告
2026年5月末は、各社が初めて令和7年度分の運用状況を公表する期限でした。総務省はその内容を確かめたうえで、7月24日、公表すべき項目の全部または一部を公表していなかったとして、X社を含む5社に勧告を出しました。X社には、8月31日までに内容を直して公表し直すことと、改善計画を出すことが求められ、10月30日を最初の期限として、2027年4月まで3か月ごとに進捗を報告することになっています。
書面を作る側から見た意味
審査業務で書面を受け取っていた経験からすると、社内の基準が外に示されていない状態では、申し立てる側は何を説明すればよいかが見えず、受け取る側も判断の理由を返しにくくなります。基準と運用の数字が公表されていくことは、申し立てる側にとって、どの基準に照らして、どの点が当てはまらないのかを示す拠り所が増えることを意味します。不服申立てを受けて撤回した件数が公表項目に入っていることも、見直しが制度のうえで想定されている表れだと受け止めています。
ただし、この法律は利用者が凍結の解除を求める権利を直接定めたものではありません。解除するかどうかを判断するのは、いまもX社です。
5 EUの動き
海外でも、X社に透明性を求める動きが続いています。欧州委員会は2025年12月、X社がDSAに違反していると認定しました。2026年7月16日には、透明性と研究者のデータアクセスに関するX社の行動計画を受け入れたと発表しています。広告の公開データベースの改善や、研究者が公開データにアクセスしやすくすることなどが盛り込まれ、X社には6か月以内の実施と、外部の監査を受けることが求められています。
この行動計画は、アカウントの凍結を直接の対象にしたものではありません。それでも、日本でもEUでも、プラットフォームの運用を外から確かめられるようにする方向で制度が動いていることは共通しています。凍結の判断も、いずれはその流れの中に置かれていくと考えています。
6 10月の個人情報漏えいと、乗っ取りへの備え
10月に入ると、国内の事業者や団体で、不正アクセスによる個人情報の漏えいが相次ぎました。10月7日から9日にかけて、個人情報保護委員会、内閣官房国家サイバー統括室、警察庁、総務省、経済産業省、金融庁などが注意喚起を出し、国家サイバー統括室は10月14日に、それらを1ページにまとめて公表しています。
国家サイバー統括室は、漏えいの経路として、ウェブシステムの脆弱性の悪用、委託先などのサプライチェーンを通じた侵害、堅牢さを欠くデータ管理を挙げ、比較的防御の弱い委託先を足がかりに侵入を広げる手口にも触れています。警察庁は個人に向けて、メール内のリンクを安易にクリックしないこと、パスワードを使い回さないこと、多要素認証を使うことを呼びかけています。
凍結と乗っ取りを取り違えない
ご相談の中には、「凍結された」と思っていたら、実際には第三者にログインされ、登録メールアドレスを書き換えられていたというケースがあります。凍結なら異議申し立てが中心ですが、乗っ取りなら、まず不正アクセスからの復旧と、被害を広げないための対応が先になります。漏えいが続く時期は、この取り違えがいっそう起きやすくなります。Xのアカウントに置き換えると、連鎖は次のように進み得ます。
1利用している別のサービスから、メールアドレスやパスワードが漏れる
2同じ組み合わせで、Xへのログインが試される
3ログインを許せば乗っ取りに、不審なログインとして検知されればロックや認証の要求につながり得る
4並行して、Xや漏えい元の企業をかたる偽の連絡が届き、リンクを開くと認証情報を奪われる
3は、Xが不審なログインをどう扱っているかを公表しているわけではないため、考えられる流れの一つです。いまのうちに、Xのパスワードを他のサービスと使い回していないかを確かめ、二段階認証を設定しておいてください。「設定とプライバシー」から、ログイン中の端末や連携アプリに心当たりのないものがないかも確認しておくと安心です。
7 よくある質問
Q年明けに凍結されたまま、何もしていません。今からでも間に合いますか。
A時間がたっていることだけで、手遅れとはかぎりません。6月に戻ってきたアカウントの多くは、凍結から3〜5か月がたっていました。ただし、それらには申し立ての記録が残っていました。まずは届いた通知を確かめ、事情を伝える準備から始めてください。
Q書面を送れば、1週間で解除されますか。
Aお約束はできません。1週間ほどというのは、本人確認の連絡が届くまでの傾向で、解除までの期間ではありません。解除までは、早いもので14日ほど、長いもので3〜4か月ほどかかっています。最終的に判断するのはX社です。
Q総務省の勧告で、凍結は解除されやすくなりますか。
A勧告は、運用状況の公表が不十分だったことに対するもので、個々の凍結の解除を求めるものではありません。ただ、基準や運用の数字が公表されていけば、申し立ての中で「どの基準に照らして当てはまらないのか」を示しやすくなると考えています。
Qログインできません。凍結か乗っ取りか、どう見分ければよいですか。
A登録メールアドレスに、パスワードやメールアドレスの変更を知らせる連絡が届いていないかを確かめてください。心当たりのない変更の連絡があれば、乗っ取りを疑い、復旧の手続きと、同じパスワードを使っている他のサービスの変更を急いでください。
Q解除されたあと、気をつけることはありますか。
A解除の直後に、以前と同じ勢いで連投や大量のフォローを再開するのは控えてください。しばらくは操作の数を抑え、同じ定型の返信を繰り返さないようにしながら、少しずつ元の運用に戻していくのが安全です。
8 弊所でお手伝いできること
凍結や乗っ取りの申し立てでは、手元にある通知やメールを、審査する側が判断しやすい形に組み直すことが求められます。弊所では次の業務をお引き受けしています。
1通知メールや画面の記録をもとに、事実関係を時系列表に整理します。
2時系列表をもとに、凍結や制限の解除を求める申立書面・通知書面を作成します。
3乗っ取りの被害で告訴を検討される場合は、告訴状を作成します。
なお、相手方との交渉、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続、告訴状の提出の代理は弁護士の業務で、弊所ではお引き受けできません。こうした手続が必要になる場合は、その旨をご説明したうえで、弁護士へのご相談をおすすめしています。
まとめ
2026年のXでは、年明けの凍結の集中、6月の解除の波、書面のあとに届く本人確認の連絡と、弊所に届くご相談の様子が季節ごとに変わってきました。その裏側で、総務省の勧告やEUの決定など、プラットフォームの運用を外から確かめられるようにする制度の動きも進んでいます。10月には個人情報の漏えいが相次ぎ、凍結だけでなく乗っ取りへの備えも欠かせなくなりました。
この一年の案件を通じて感じるのは、戻ってくるアカウントには、事情を伝えた記録と、本人確認にすぐ応じられる準備があるということです。いまアカウントが止まっている方は、届いた通知と、これまでのやり取りを手元にそろえるところから始めてください。
参考資料
総務省「情報流通プラットフォーム対処法第28条に定める公表義務の違反に係る勧告等」(2026年7月24日)
総務省「インターネット上の違法・有害情報への対応について」内閣府消費者委員会説明資料(2026年5月18日)
総務省「情報流通プラットフォーム対処法の省令及びガイドラインに関する考え方」(令和6年11月)
European Commission「Commission accepts X's action plan to comply with Digital Services Act」(2026年7月16日)
内閣官房国家サイバー統括室「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた各機関による注意喚起等について」(2026年10月14日)
内閣官房国家サイバー統括室「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえた対応について」(2026年10月9日)
警察庁「サイバー警察局便り 2026 Vol.19」(2026年10月23日更新)
個人情報保護委員会「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について(注意喚起)」の公表(2026年10月7日)
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執筆・運営について
リーリエ行政書士事務所
SNSアカウントの凍結解除・乗っ取り復旧を専門とする行政書士事務所です(東京都行政書士会所属)。弊所の業務範囲は、事実関係と証拠の整理、申立書面・通知書面・開示請求書面等の作成までです。交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続は行っていません。
| 事務所 | リーリエ行政書士事務所 |
|---|---|
| 取扱分野 | SNSアカウントの凍結・乗っ取りからの復旧、SNSアカウント運用サポート |
| 公開 | 2026年10月29日 |


