「X乗っ取りからアカウント奪還するまで」を読んで 書面を作成した行政書士からの補足
X(旧Twitter)アカウントの乗っ取り被害でご相談いただいたぶらさんが、アカウントを取り戻すまでの経緯をnoteにまとめてくださいました。その中で、弊所にご依頼いただいたことにも触れていただいています。この場を借りてお礼申し上げます。
記事には、乗っ取りに気づいた朝から、ログインを取り戻すまでの約2週間の出来事が、ご本人の言葉で細かく書かれています。同じ状況で困っている方には、まずこの記事を読んでいただきたいと思います。
この記事では、書面の作成をお手伝いした弊所の側から見えていたことと、記事の内容への補足をお伝えします。
4章以降の補足と対策は、乗っ取り被害一般についての説明です。個別の事案で同じ経過や結果になることを示すものではありません。アカウントの状況や運営側の対応によって、取るべき手順は変わります。
この記事で確認すること
1 当事者の記録だから分かること
2 復旧までの2週間
3 事務所側から見えていたこと
4 記事の工夫への補足
5 書面でできること、できないこと
6 いちばんの対策は、乗っ取られないこと
1 当事者の記録だから分かること
事務所に届くのは、ご相談の時点での状況と、その後にいただくご連絡です。ご本人が夜中に何度サポートへ返信したか、サブアカウントでどんな不便があったか、どんな気持ちで待っていたかは、記事を読んで初めて知ったことも多くありました。
記事には、手順をまとめた解説ではなかなか出てこない、実際にどこで詰まるかが書かれています。
1乗っ取りの数日前から、海外からのログインを知らせる通知が届いていた。
2乗っ取った側が設定した二要素認証のせいで、パスワードを変えてもログインできなかった。
3Xサポートへの返信は、日本語のみや日英併記の長文では反応がなく、英語だけで短く緊急性を伝えた3回目で解除につながった。
4解除の連絡が来たあとも、パスワード再設定が試行回数の上限にかかり、ログインまで3日待った。
5被害の間に使い始めたサブアカウントは、しばらく検索に表示されにくい状態が続いた。
2 復旧までの2週間
記事に書かれている出来事を、順を追って並べると次のとおりです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 乗っ取りの数日前 | 海外からのログインを知らせる通知が届く |
| 気づいた当日 | ログアウトされ、メールアドレス変更の通知で乗っ取りに気づく。Xサポートへ報告 |
| 翌日 | 弊所へご相談。書面の作成をご依頼いただく |
| その後の約1週間 | ご本人がサポートへの返信を3回重ね、知人の方々がなりすまし報告に協力 |
| 10日目ごろ | 書面がX社の米国本社に到着。その翌日ごろ、二要素認証を解除したとの連絡 |
| 解除の連絡後の数日 | パスワード再設定が試行回数の上限にかかり、待機 |
| 約2週間後 | ログインを取り戻す |
*ぶらさんのnote記事の記載にもとづく、この事案での経過です
3 事務所側から見えていたこと
弊所がお手伝いしたのは、X社の日本法人と米国本社に宛てた書面の作成です。アカウントの状況と、ご本人であることの根拠を整理し、二要素認証の解除を求める内容を和文と英文で作って送付しました。
書面が米国本社に届いたのとほぼ同じころに、解除の連絡がありました。何が決め手になったのかは、X社が理由を示さない以上、分かりません。ご本人の返信、知人の方々の報告、そして書面が、同じ時期に重なった結果だと受け止めています。
ご本人は、事務所に任せきりにせず自分でも動くという姿勢で臨まれていました。これは弊所がご依頼者にいつもお願いしていることと同じです。書面は届くまでに日数がかかります。その間にご本人ができることを止める理由はありません。
ご相談が乗っ取りの翌日だったことも大きかったと思います。記事には、相談の場で「今日中に決めてほしい」と急かされたように書かれています。そう受け取られたのは無理もないと思います。ただ、乗っ取りの復旧は時間がたつほど不利になる、スピード勝負です。急いでいただいたのには、次のような理由があります。
1本人とアカウントを結びつける情報が消えていきます。乗っ取った側は、メールアドレスや電話番号、パスワード、二要素認証を順に自分のものへ書き換えます。元のメールアドレスとの紐づけが残っているうちは、運営からの連絡を本人が受け取れますが、これが切り替わると、本人であることを示す手段が一気に限られます。
2アカウントの見た目が変わっていきます。ユーザー名やプロフィール、表示名が書き換えられ、過去の投稿が消されると、運営に「このアカウントは自分のものだ」と示す材料が減ります。アカウントがそのまま転売されることもあります。
3アカウントそのものが凍結されるおそれがあります。乗っ取られたアカウントから詐欺的なDMやスパム投稿が繰り返されると、規約違反としてアカウントが凍結されることがあります。そうなると、乗っ取りの回復と凍結の解除という、二つの問題を抱えることになります。
4知人への被害が広がります。フォロワーに偽の投稿やDMが届き、金銭をだまし取られるなどの二次被害が出ると、アカウントが戻ったあとも信頼の回復に時間がかかります。
5書面が届くまでに日数がかかります。海外宛ての書面は、作成してから国際郵便で届くまでに、少なくとも数日から1週間ほどかかります。相談から判断までに数日空けば、その分だけ書面の到着も遅れ、届いたときには状況が変わっていることがあります。
しばらく様子を見てからのご依頼はお受けしにくい、とお伝えしたのも同じ理由です。時間がたって見込みが下がった段階で費用をいただくことは、ご依頼者のためになりません。急かすような言い方になったことは反省しつつ、見込みのあるうちに判断していただきたいという考えは変わりません。ご自身で試してみる場合も、書面の準備と並行して進めていただくのがよいと考えています。
4 記事の工夫への補足
ぶらさんが試行錯誤の末にたどり着いたやり方は、弊所がご相談者にお伝えしている内容とほぼ重なります。ここからは、乗っ取り被害一般についての補足です。
| 場面 | 気をつけること |
|---|---|
| サポートへの返信 | 届いたメールの件名を変えず、同じやり取りの中で続ける。問い合わせを立て直すと、経緯が別の件として扱われ、確認がやり直しになることがある |
| 英文の書き方 | 何が起きたか、何をしてほしいか、本人である根拠は何かを数行でまとめる |
| 解除の連絡を待つ間 | ログインやパスワード再設定を何度も試さない。上限にかかると、解除後も数日待つことになる |
| サブアカウントでの告知 | フォローやプロフィール変更を短時間にまとめて行わない。新しいアカウントの急な動きは、スパムと判定されやすい |
| 取り戻した直後 | 二要素認証の設定とバックアップコードの保管、ほかの端末からのログアウト、連携アプリの解除をその日のうちに済ませる |
5 書面でできること、できないこと
弊所の業務は、事実関係と証拠を整理し、申入書などの書面を作成するところまでです。X社との交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分や訴訟の手続は行いません。そうした対応が必要な場合は、弁護士にご相談いただくようご案内しています。
アカウントを解除するかどうか、いつ解除するかは、X社が判断することです。書面を送れば必ず解除されるというものではありません。記事の中で見通しの数字に触れていただいていますが、これはご相談時の状況を前提にした目安としてお伝えしたもので、結果をお約束するものではありません。ご依頼の前には、見込みと限界、費用をお伝えし、ご本人に判断していただいています。
6 いちばんの対策は、乗っ取られないこと
記事の最後でぶらさんが挙げている対策は、どれもそのまま実行していただきたいものです。一般的な対策として、弊所からも次の点をお願いします。
1二要素認証を有効にし、認証アプリを使う。バックアップコードは端末とは別の場所に保管する。
2Xの設定で、パスワードリセットの保護をオンにする。
3身に覚えのないパスワード再設定メールが届いても、リンクは開かない。
4Xに登録しているメールアドレスやApple Account側にも、二要素認証を設定する。
5海外からのログイン通知など、前触れを見過ごさない。
パスワード再設定メールを使った攻撃は、繰り返し報告されています。開設から年数のたったアカウント、フォロワーの多いアカウント、告知に使っているアカウントは、特に狙われやすいと感じています。
AUTHOR & SUPERVISION
執筆・運営について
リーリエ行政書士事務所
SNSアカウントの凍結解除・乗っ取り復旧を専門とする行政書士事務所です(東京都行政書士会所属)。弊所の業務範囲は、事実関係と証拠の整理、申立書面・通知書面・開示請求書面等の作成までです。交渉の代理、発信者情報開示請求、仮処分・訴訟の手続は行っていません。
| 事務所 | リーリエ行政書士事務所 |
|---|---|
| 取扱分野 | SNSアカウントの凍結・乗っ取りからの復旧、SNSアカウント運用サポート |
| 公開 | 2026年11月2日 |


