相続放棄したのに管理義務は残る?固定資産税の通知が来たときの対応を行政書士が解説

「相続放棄の手続きが終わって、ようやくあの家から解放されたと思っていたのに——」。そんなあなたのもとに、役所から固定資産税の納税通知書が届いたり、近隣から「空き家をどうにかしてほしい」と連絡が来たりして、戸惑っていませんか。「放棄したはずなのに、なぜ?」「自分はまだ何かしないといけないの?」と、不安が押し寄せているかもしれません。

実は、相続放棄をしても「すべての責任から即座に・完全に解放される」とは限りません。ここには多くの人が誤解しているポイントがあり、知らずに放置すると思わぬトラブルにつながることもあります。とはいえ、正しく理解して手順を踏めば、過度に恐れる必要はありません。

この記事では、「相続放棄したのに通知が来た」という方に向けて、行政書士の視点から、なぜ通知が来るのか、管理義務はどこまで残るのか、固定資産税は払うのか、そしてどうすれば義務から解放されるのかを、順を追ってわかりやすく解説します。今まさに通知を前に困っている方が、落ち着いて次の一歩を踏み出せるよう、具体的にお伝えします。

なぜ相続放棄したのに通知が来るのか

まず、多くの方が抱く「放棄したのに、なぜ?」という疑問にお答えします。理由は大きく2つあります。

相続放棄しても自動で関係が消えない場面がある

相続放棄をすると、法律上は「はじめから相続人ではなかった」ことになります。つまり、預貯金や不動産といったプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も、原則として一切引き継ぎません。ここまでは多くの方がご存じのとおりです。

しかし、注意が必要なのは「財産を相続しないこと」と「その財産を管理する責任から完全に解放されること」は、必ずしもイコールではないという点です。特に、放棄した時点であなたがその不動産に住んでいた、あるいは現に管理していたような場合には、次に管理する人が決まるまでの間、一定の保存義務が残ることがあります。この点は後で詳しく説明します。

固定資産税の通知が来る仕組み

固定資産税は、毎年1月1日時点の固定資産課税台帳に登録されている所有者に対して課税されます。役所は、亡くなった方の名義のままになっている不動産について、相続人とみられる人に納税通知を送ることがあります。

ここで大切なのは、納税通知が届いたこと=あなたの相続放棄が無効になった、ということではないという点です。役所は課税台帳の情報に基づいて事務的に通知を送っているため、放棄の事実がまだ反映されていない、あるいは把握されていないケースがあるのです。通知が来ても慌てず、後述する手順で対応すれば大丈夫です。

💡 ポイント:「通知が来た=支払い義務が確定した」ではありません。まずは落ち着いて、放棄が受理されたことを示す書類(相続放棄申述受理通知書など)が手元にあるか確認しましょう。

相続放棄後も残る「管理義務」の正体

相続放棄をめぐって、最も誤解が多く、また2023年の民法改正でルールが整理されたのが、この「管理義務」です。ここを正しく理解しておきましょう。

改正後のルール「現に占有している場合」

2023年4月に施行された改正民法では、相続放棄をした人の管理義務について、ルールが明確になりました。ポイントは、「放棄の時にその財産を現に占有しているとき」は、相続人や相続財産清算人などにその財産を引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務を負うという考え方です。

少しかみ砕くと、こういうことです。

あなたの状況 保存義務の考え方
放棄した家に住んでいた・現に管理していた 引き渡すまで保存義務が残る可能性がある
遠方に住み、その財産を占有していなかった 保存義務を負わないと考えられる

つまり、何十年も絶縁していて、その家に一度も足を踏み入れたことがないようなケースでは、そもそも「現に占有している」状態にあたらず、保存義務を負わないと考えられます。一方、亡くなった親と同居していた、放棄前に家の鍵を持って出入りしていたといった場合には、注意が必要です。

誰が・いつまで義務を負うのか

保存義務が残る場合でも、それは「永久に」ではありません。次に管理する人——たとえば他の相続人や、家庭裁判所が選任する「相続財産清算人」——にその財産を引き渡すまでの間の、いわば“つなぎ”の義務です。引き渡しが完了すれば、義務から解放されます。

また、求められるのは「自己の財産と同一の注意」、つまり自分の持ち物に対して払うのと同程度の注意です。プロの管理者のような高度な管理を求められるわけではありません。建物が倒壊して他人にケガをさせないよう最低限気を配る、といったレベルが目安になります。

放置するとどうなるか

保存義務があるのに放置し、たとえば老朽化した建物の一部が崩れて通行人がケガをした、隣家に損害を与えた、という事態になると、損害賠償を求められるリスクが生じます。「放棄したから知らない」で済ませず、義務が残るかどうかを早めに確認し、適切に対応することが大切です。判断に迷う場合は、専門家に状況を整理してもらうのが安全です。

固定資産税は結局払うのか?

通知が届いて一番気になるのが、「結局、この固定資産税は払わないといけないのか」という点でしょう。

納税義務者の考え方

相続放棄が有効に成立していれば、あなたははじめから相続人でなかったことになるため、相続を理由とする固定資産税の納税義務は原則として負いません。届いた通知は、役所が放棄の事実を把握していないために、事務的に送られてきたものである可能性が高いのです。

ただし、自己判断で通知をそのまま無視するのは禁物です。放棄が受理されていることを役所に正しく伝え、課税の扱いを確認してもらう必要があります。何もしないと督促が続いたり、行き違いでトラブルになったりすることがあります。

通知が来たときの対応手順

納税通知が届いたら、次の手順で落ち着いて対応しましょう。

手順 やること
相続放棄申述受理通知書(または受理証明書)を手元に用意する
通知を出した役所の担当課(資産税課など)に連絡する
相続放棄をした事実を伝え、必要書類の提出方法を確認する
指示に従って受理通知書の写しなどを提出する

「放棄を伝えれば終わり」とは限らず、役所によって求められる書類や手続きが異なることがあります。やりとりに不安がある場合は、専門家にサポートを依頼すると安心です。

管理義務から解放される方法

「保存義務が残っているかもしれない」「いつまでこの家のことを気にかけないといけないのか」——そんな不安を解消するための方法を見ていきましょう。

相続財産清算人の選任という選択肢

相続人全員が放棄するなどして、その財産を管理・清算する人がいなくなった場合、家庭裁判所に申し立てて「相続財産清算人」を選任してもらう方法があります。清算人が選任され、その人に財産を引き渡せば、保存義務から解放されます。清算人は、財産を管理し、債権者への支払いなどの清算を行い、最終的に残った財産を国庫に帰属させるなどの手続きを進めます。

ただし、清算人の選任申立てには、予納金(数十万円以上になることもあります)が必要になる場合があり、誰が負担するのかという問題も出てきます。費用や手続きの負担を踏まえ、本当に申立てが必要なケースかどうかを見極めることが大切です。

💡 ポイント:相続財産清算人の選任申立ては家庭裁判所での手続きです。当事務所では、戸籍・相続関係の調査や状況整理を行ったうえで、申立てが必要な場合は提携する専門家と連携してご案内します。

他の相続人との関係を確認する

あなたが放棄しても、他に相続人がいれば、その人が財産を引き継ぎます。たとえば、あなたが第一順位の子として放棄した場合、次の順位の人(親や兄弟姉妹など)に相続権が移ることがあります。誰が次の相続人になるのかを戸籍で確認し、その人に引き継がれるのかを把握することが、解決への近道です。次順位の相続人がいるのに連絡が取れない、絶縁している、というケースでは、専門家が間に立って整理することもできます。

【事例】放棄後に「家を管理しろ」と言われたFさん

※守秘義務に配慮し、内容は一部改変しています。

【相談内容】
Fさん(50代)は、長年絶縁していた父が亡くなり、借金があると分かったため相続放棄をしました。ところが数か月後、父が所有していた古い空き家について、市役所から「老朽化が進み危険なので、管理してほしい」という連絡と、固定資産税の納税通知書が届きました。「放棄したのに、なぜ自分が?」と混乱し、当事務所にご相談に来られました。

【対応】
まず、Fさんがその空き家を一度も占有・管理したことがないことを確認しました。Fさんは遠方に住み、父とは絶縁状態で家に立ち入ったこともなかったため、「現に占有している」状況にはあたらないと整理できました。そのうえで、固定資産税については、相続放棄申述受理通知書の写しを役所へ提出し、放棄の事実を伝える対応をご案内。あわせて、他に相続人がいるかを戸籍で調査し、次順位の相続人の有無を確認しました。最終的に管理する人がいない状況だったため、相続財産清算人の選任について、費用面も含めて提携専門家と連携して検討を進めました。

【結果】
役所への対応により、Fさんに固定資産税の負担が及ばないことが整理でき、空き家の管理についても、自分が占有していなかった事情を説明することで過度な責任を負わずに済みました。「何をどう伝えればいいか分からず不安だったが、順序立てて対応できて安心した」と話されています。

やってはいけないNG行動

相続放棄の前後で、次のような行動をとると、思わぬトラブルや「放棄が認められない」といった事態を招くことがあります。注意しましょう。

  • 放棄前に遺品や財産を処分・売却する:相続財産を処分すると、相続する意思があるとみなされ(単純承認)、放棄ができなくなる恐れがあります。
  • 放棄後に家財を勝手に持ち出す:放棄後も財産は他の相続人や清算人に引き継がれるべきもの。勝手な処分はトラブルのもとです。
  • 通知を無視して放置する:放棄が有効でも、役所に伝えなければ督促が続くことがあります。
  • 自己判断で「もう関係ない」と思い込む:占有の有無など、判断が分かれる点もあります。迷ったら専門家に確認を。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄すれば、空き家の管理はしなくていいのですか?

A. 放棄の時にその家を現に占有していた場合などは、次の管理者に引き渡すまで保存義務が残ることがあります。一方、遠方で占有していなかった場合は、義務を負わないと考えられます。状況によって異なるため、確認が大切です。

Q2. 固定資産税の通知が来たということは、相続放棄が無効になったのですか?

A. いいえ。通知は課税台帳の情報に基づいて事務的に送られたもので、放棄の有効性とは別問題です。放棄が受理されていることを役所に伝えて、対応してもらいましょう。

Q3. 管理義務から完全に解放されるには、どうすればいいですか?

A. 他の相続人や、家庭裁判所が選任する相続財産清算人に財産を引き渡すことで解放されます。清算人の選任には費用がかかる場合があるため、必要性を見極めて進めることが大切です。

Q4. 他の相続人も全員放棄したら、その家はどうなりますか?

A. 管理・清算する人がいなくなるため、相続財産清算人の選任が必要になるケースがあります。放置すると管理責任の問題が残るので、早めに対応を検討しましょう。

行政書士に相談するメリット

相続放棄後のトラブルは、「自分に義務があるのか」「何をすればいいのか」の判断が難しく、一人で抱え込むと不安が募りがちです。行政書士に相談することで、次のようなメリットがあります。

  • 状況の整理:占有の有無など、保存義務が残るかどうかをあなたの状況に即して整理します。
  • 戸籍・相続関係の調査:次順位の相続人がいるかを戸籍で確認し、財産の行き先を明らかにします。
  • 役所対応の方針づくり:固定資産税の通知などへの対応手順を整理し、必要書類の準備をサポートします。
  • NG行動の回避:放棄が認められなくなるような行動を未然に防ぎます。
  • ワンストップ案内:相続財産清算人の選任など家庭裁判所の手続きが必要な場合は、提携する司法書士・弁護士を紹介し、一貫してサポートします。

まとめ──「放棄したのに」の不安は、正しい順序で解消できる

相続放棄をしても、占有していた財産については一定の保存義務が残ることがあり、固定資産税の通知が届くこともあります。けれども、それは「放棄が無効になった」わけでも「永久に責任を負う」わけでもありません。占有の有無を確認し、役所に放棄の事実を伝え、必要なら清算人の選任を検討する——この順序で進めれば、不安は着実に解消できます。

「自分のケースでは義務が残るのか分からない」「役所に何をどう伝えればいいのか不安」——そんなときは、ぜひ当事務所までご相談ください。あなたの状況を丁寧に伺い、放棄後のもやもやを解消する具体的な手順を、一緒に整理します。一人で悩まず、まずはお気軽にご連絡ください。

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