ストーカーとは?~「怖い」「逃げたい」に、法律と対策でできること~
1. はじめに
「誰かの視線をいつも感じる」 「無言の電話やLINEが何度も届く」 「一度断ったのに、また近づいてくる」
そんな“気味の悪さ”や“言いようのない恐怖”が、だんだん日常を壊していく。それが「ストーカー被害」の特徴です。
もし、今あなたがこのような経験をされているなら、それは決して気のせいではありません。私たちリーリエ行政書士事務所(東京都江東区)にも、ストーカー被害に関する深刻なご相談が寄せられています。
ストーカー行為は、被害者の心身に大きな苦痛を与え、平穏な生活を奪ってしまう深刻な問題です。しかし、多くの方が「誰に相談すればいいのか分からない」「まだ大丈夫だろう」と一人で抱え込んでしまい、被害がエスカレートしてしまうケースも少なくありません。
この記事では、ストーカーとは何か、そして被害に遭った場合にどう対応すべきかを、法律の専門家である行政書士の視点から、できるだけやさしく、実際的に解説します。あなたが安心して日常を取り戻すための、第一歩となる情報をお届けします。
この記事でわかること
- ストーカー行為が具体的にどんなことなのか
- 被害に遭ったときに、自分でできる具体的な対処法
- 専門家に相談するメリットと次のアクション
2. 背景と基本知識の解説
「ストーカー」という言葉はよく耳にするけれど、具体的にどんな行為がストーカーにあたるのか、意外と知らない方も多いかもしれません。ストーカーとは、特定の相手に対して、繰り返しつきまとう行為をいいます。そして、この行為は明確に法律で禁止されています。
2000年に施行された「ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)」という法律が、このような行為を厳しく取り締まるためのものです。この法律では、以下のような行為が禁止されています。
ストーカー規制法で禁止されている行為
- つきまといや待ち伏せ あなたの家の近くや職場、学校の周辺で待ち伏せしたり、後をつけたりする行為です。
- 自宅や職場など周囲をうろつく あなたの住んでいる場所や働いている場所の近くを何度も行ったり来たりするなど、周囲を徘徊する行為です。
- 無言電話、連続したメッセージ送信 電話をかけてきて無言だったり、短時間に何十件もLINEやメールを送ってきたりする行為です。
- 面会や交際の強要 「会ってくれないと困る」「付き合ってほしい」などと、しつこく面会や交際を迫る行為です。
- 名誉を傷つける発言や書き込み インターネット上の掲示板やSNSに、あなたの悪口やプライベートな情報を書き込んだり、周囲の人に言いふらしたりする行為です。
- 性的な言動、盗撮 性的な内容のメッセージを送ったり、あなたの身体を勝手に撮影したりする行為です。
- 乱暴するそぶりや危害を加える予告 何か物にあたったり、物を投げたりするような乱暴な態度を見せたり、「〇〇してやるぞ」などと、あなたやあなたの家族に危害を加えるような言葉を言ったりする行為です。
これらの行為を相手の意思に反して繰り返すことがあれば、それはストーカー行為にあたり、警察や行政書士に相談する対象となります。
よくある誤解 恋愛感情だけが動機ではない
ストーカー行為というと、「元恋人からのしつこい連絡」をイメージする方が多いかもしれません。しかし、実はそれだけではありません。ストーカー行為の動機は多岐にわたります。
- 仕事上のトラブルからの逆恨み 職場の人間関係や業務上のトラブルから、一方的に恨みを持ち、つきまといが始まるケース。
- SNSで知り合っただけの相手からの執着 インターネット上で知り合った相手に対して、一方的に好意や執着を抱き、つきまといに発展するケース。
- 一方的に親しみを持たれた近所の人からの接近 近所の人に挨拶しただけなのに、一方的に親しみを感じられ、過度な接近や干渉が始まるケース。
このように、動機が恋愛感情であっても、恨みであっても、「やめてほしいことを繰り返す」こと自体がストーカー規制法の対象となるのです。
私たち行政書士は、法律に関する専門家として、ストーカー被害に関する法的な知識提供や、警察への相談準備、内容証明郵便の作成などを通じて、皆さんが安心して生活できるようサポートします。もし「これはストーカー行為かもしれない」と感じたら、早めに専門家にご相談いただくことで、被害の拡大を防ぎ、法的な対応への道筋を立てることができます。
3. 事例紹介
ここでは、実際にストーカー被害に遭われた方が、どのような状況でどのように対応したのか、行政書士がどのようなサポートができるのかを、具体的な事例でご紹介します。
事例1 無言電話とつきまといに悩む女性
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状況 30代の女性Aさんは、数ヶ月前から自宅に無言電話が頻繁にかかってくるようになりました。最初は間違い電話かと思っていたのですが、同時期に、通勤途中で見慣れない車によく遭遇したり、自宅近くで不審な人物がうろついているのを見かけたりするようになりました。元恋人との関係も良好ではなく、Aさんは「もしかして」と不安を感じていました。
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とった行動 Aさんは、無言電話の着信履歴を全てスクリーンショットで保存し、不審な人物を見かけた日時と場所をメモに記録しました。また、自宅近くに設置された防犯カメラの有無も確認しました。
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リーリエ行政書士事務所のサポート Aさんからのご相談を受け、私たちはまず、これらの記録がストーカー行為の証拠となることをお伝えしました。そして、警察へ相談する際の状況説明の準備として、これまでの経緯を時系列で整理するお手伝いをしました。具体的に「いつ、どこで、誰が、何をされたか」を明確にすることで、警察が状況を把握しやすくなります。必要に応じて、警察への相談同行も検討しました。
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結果 整理された情報を持って警察に相談した結果、警察はAさんの被害状況を深刻に受け止め、警告やその後の対応へと進めることができました。早期に行政書士に相談し、証拠を整理したことで、スムーズに警察の協力を得ることができた事例です。
事例2 SNSでの誹謗中傷とつきまといに苦しむ男性
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状況 20代の男性Bさんは、あるオンラインゲームで知り合った人物から、ゲーム内でのトラブルをきっかけに、SNSで誹謗中傷の投稿をされるようになりました。さらに、Bさんの自宅や職場を特定し、その周辺で待ち伏せされるなど、つきまとい行為もエスカレートしていきました。
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とった行動 B さんは、SNSの誹謗中傷の投稿画面をスクリーンショットで保存し、ゲーム内でのトラブルのやり取りも記録しました。つきまとい行為については、その日時や場所、相手の行動を詳細にメモしました。
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リーリエ行政書士事務所のサポート 私たちは、SNSでの誹謗中傷もストーカー規制法や他の法律に抵触する可能性があることを説明し、被害状況を示す証拠としての価値を伝えました。そして、これらの証拠をもとに、まずは警察への相談を強く促しました。警察へ相談する際の具体的な伝え方や、どのような情報が必要になるかを事前にアドバイスしました。
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結果 警察への相談により、相手への警告が行われ、SNSの投稿も削除されました。つきまとい行為も収まり、Bさんは安心して生活できるようになりました。SNSでの被害も、ストーカー行為の一環として認識され、適切な対応ができた事例です。
事例3 職場の同僚からのしつこい誘いとつきまとい
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状況 40代の女性Cさんは、職場の同僚から繰り返し食事や交際の誘いを受け、断っても執拗に連絡が来たり、Cさんの帰宅時間に合わせて待ち伏せされたりするようになりました。精神的なストレスから、仕事にも集中できない状態でした。
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とった行動 Cさんは、同僚からのしつこいメッセージの履歴を保存し、待ち伏せされた日時や場所をメモに記録しました。また、社内のハラスメント相談窓口への相談も検討し始めました。
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リーリエ行政書士事務所のサポート 私たちは、職場内の問題でありながらも、個人の生活にまで影響を及ぼすつきまとい行為がストーカー規制法の対象になり得ることを伝えました。Cさんの精神的負担を考慮し、直接相手とやり取りをするのではなく、会社の人事部や警察、または行政書士のような第三者を介した対応の重要性を説明しました。状況によっては、会社への書面での通知や、警察への被害届提出のサポートも検討しました。
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結果 Cさんは、行政書士のアドバイスを受け、警察へ相談。警察からの警告により、同僚のつきまとい行為は止まりました。職場という閉鎖的な環境でのトラブルでも、外部の専門家を頼ることで解決の道が開けることを示す事例です。
これらの事例からわかるように、ストーカー被害は、いつ、誰にでも起こりうる身近な問題です。
トラブルが深刻化する前に、証拠をしっかり残し、早めに専門家へ相談することが何よりも大切です。対応が遅れると、被害がエスカレートし、精神的な負担が増大するリスクがあります。
4. アドバイス
ストーカー被害に遭ってしまったとき、「どうしたらいいんだろう」と途方に暮れてしまうのは当然です。しかし、適切な対処法を知っていれば、状況を好転させることができます。
自分でできる対処方法
まず、一番大切なのは証拠を残すことです。
- メッセージや着信履歴は削除せず保管しましょう。スクリーンショットを撮ったり、必要であれば印刷したりして、必ず記録を残してください。
- 録音や写真、監視カメラなども有効な証拠になります。もし相手と直接会うことになった場合は、相手に伝えた上で録音することも検討してください。
- ストーカー行為があった日時、内容、場所などを、できるだけ具体的にノートにメモしておきましょう。これは、警察や弁護士に相談する際の大切な材料になります。
次に、相手との接触を避けることです。
- 相手と直接やり取りをしないようにしましょう。メッセージの返信や電話に出ることも避けてください。
- 場所や時間を予測されにくくする工夫も大切です。通勤経路を変えたり、帰宅時間をずらしたりするなど、できる範囲で対策を取りましょう。
- スマホやSNSのセキュリティを強化することも重要です。プライバシー設定を見直したり、見知らぬアカウントからのフォロー申請を拒否したりしましょう。
専門家に相談するタイミングと流れ
「まだ我慢できるかも」「これくらいで相談していいのかな」と思わずに、「怖い」と感じたその瞬間に、専門家への相談を検討してください。早期の相談が、あなたの安全と安心を守るための鍵となります。
警察への相談
ストーカー規制法に基づき、警察は警告、禁止命令、逮捕などの措置をとることができます。
- 全国の警察署の窓口で相談できます。
- 緊急性が高くない場合でも、#9110(警察相談専用ダイヤル)に連絡して状況を伝えることができます。
警察に相談する際は、これまであなたが集めた証拠を全て持参し、経緯を詳しく伝えることが大切です。
行政書士や弁護士への相談
警察への相談と並行して、または警察では対応が難しいと感じる場合、行政書士や弁護士のような法律の専門家に相談することも有効です。
- 行政書士 ストーカー被害の状況を整理し、警察への相談準備のサポート、内容証明郵便の作成を通じて、相手への意思表示を明確にするお手伝いができます。感情的なやり取りを避けて、冷静な対応を促します。
- 弁護士 ストーカー被害が深刻で、接近禁止命令(裁判所からの保護命令)の申立てや、慰謝料請求、損害賠償請求といった民事手続きを検討する場合には、弁護士が法的な代理人として対応できます。
専門家を選ぶ際は、ストーカー問題に関する経験があるか、そして、皆さんの状況を丁寧にヒアリングし、分かりやすく説明してくれるかを確認しましょう。
よくある失敗例と注意点
「相手を刺激したくない」と、証拠を残さずに我慢し続けてしまうことが、被害を拡大させる大きな要因になります。また、直接相手と交渉しようとして、かえって危険な状況に陥ってしまうケースもあります。
専門家に相談しないリスクは、問題が長期化したり、あなたの精神的・身体的な健康が損なわれたりする可能性があることです。また、法的な対応が遅れることで、証拠が散逸してしまったり、相手がさらにエスカレートしたりする危険性も高まります。
事前に相談内容をまとめておくことは、どの専門家に相談する場合でも非常に有効です。事実を簡潔に、時系列で整理しておくことで、相談がスムーズに進み、より的確なアドバイスを受けることができます。
5. まとめと次のアクションの提案
「怖い」「逃げたい」という感情は、ストーカー被害の初期段階で誰もが感じる自然な反応です。しかし、その感情を一人で抱え込まず、行動に移すことが何よりも大切です。ストーカー行為は、明確に法律で禁止されており、あなたの安全を守るための制度やサポートが用意されています。
このブログ記事で解説したように、まずは証拠をしっかりと残すこと、そして、警察や行政書士のような専門家に相談することが、状況を好転させるための鍵です。あなたはひとりではありません。法律も、制度も、そして私たち行政書士も、あなたの味方です。ほんの一歩でも、その一歩が、状況を変える大きなきっかけになります。
もし「もしかして私のことかも」と感じたなら、あるいは「誰かの視線が気になる」「しつこい連絡が続く」といった不安を抱えているなら、迷わずご相談ください。
今すぐできること
- 現在の状況をメモにまとめる いつ、どこで、誰に、何をされたのか。些細なことでも記録しておきましょう。
- 警察への相談を検討する 緊急性が高ければすぐに110番、そうでない場合は#9110へ連絡しましょう。
- リーリエ行政書士事務所に相談する 警察への相談準備や、法的な対応に関するアドバイスが必要な場合は、私たちリーリエ行政書士事務所(https://lillie.jp/column/)へご連絡ください。あなたの状況を丁寧に伺い、最適なサポートを提供します。
ご自身が当事者でなくとも、周りの大切な人が困っていたら、ぜひ「そういう制度やサポートがあるよ」と伝えてあげてください。
あなたのその一言が、誰かの未来を救うかもしれません。
ご不安なことがあれば、いつでも私たちにご相談ください。