合意管轄の重要性と実務上の注意点|リーリエ行政書士事務所の視点

1.はじめに

契約書やサービス利用規約を作成する際、「合意管轄」という言葉を目にすることがあるかと思います。この合意管轄、実は万が一のトラブルの際に非常に重要な役割を果たすことをご存知でしょうか。今回は、この合意管轄の重要性と、実務上で注意すべき点について解説します。

2.合意管轄とは何か?

合意管轄とは、契約当事者間で「将来、この契約に関して紛争が生じた場合は、〇〇裁判所で訴訟を行う」というように、どこの裁判所で裁判を行うかをあらかじめ合意しておくことです。通常、契約書や利用規約の一条項として定められます。

3.訴訟が提起された場合と「移送」の可能性

もし、合意管轄の定めがない状態で訴訟が提起された場合、原則として法律で定められた管轄裁判所で審理されることになります。しかし、一度訴訟が始まったとしても、内容によっては「移送」という手続きによって審理する裁判所が変わる可能性があります。

移送とは、裁判所の職権や当事者の申立てによって、現在訴訟が係属している裁判所から別の裁判所に事件を移すことです。当事者が移送を申し立てる場合、なぜその裁判所での審理が適切でないのか、あるいは別の裁判所での審理が適切なのかを意見書として作成し、裁判所に提出することになります。

時間稼ぎに使われることも?実務上の困難さ
この移送の申立ては、残念ながら訴訟の時間稼ぎのために使われることもあります。例えば、相手方が審理の遅延を図りたい場合、不当な理由で移送を申し立ててくるケースもゼロではありません。

実務上、一度始まった裁判の審理する裁判所を変更するのは非常に手間がかかります。移送が認められるかどうかの判断にも時間がかかりますし、移送が決定すれば、新しい裁判所でまた一から手続きが進められることになり、時間も費用も余計にかかってしまいます。

4.契約書で裁判管轄を明確にしておくべき理由

このような事態を避けるためにも、契約書で裁判管轄をしっかりと確定しておくことが極めて重要です。具体的に「〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」などと明確に記載しておくことで、万が一の紛争発生時でも、あらかじめ合意した裁判所で迅速に手続きを進めることができます。これは、予期せぬ時間や費用の負担を軽減し、スムーズな問題解決に繋がります。

サービス利用規約における同意フローの重要性
特に、インターネットサービスなどのサービス利用規約の場合、ユーザーが管轄に同意したことがシステム上、どのようなフローで確認できるのかを説明できるようにしておくことが大切です。例えば、利用規約への同意が明確に示されたチェックボックスや、同意日時が記録される仕組みなど、同意の証拠を残すことが後々のトラブル防止に役立ちます。

5.まとめ

合意管轄は、単なる契約書の一文と軽視されがちですが、いざという時のリスクを軽減し、紛争を円滑に解決するための重要な条項です。契約書や利用規約を作成する際には、この合意管轄について専門家のアドバイスも参考にしながら、慎重に定めることを強くお勧めします。

このブログ記事で、合意管轄の重要性についてご理解いただけたでしょうか。ご自身の契約書や利用規約を見直すきっかけになれば幸いです。

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