行政書士の懲戒処分制度を解説 信頼できる行政書士を見極めるポイント

お客様の人生やビジネスにおいて、行政書士が頼りになる存在であることは間違いありません。しかし、専門家だからといって、常に完璧な対応が保証されるわけではありません。残念ながら、ごく稀に行政書士との間でトラブルが発生したり、その業務内容に疑問を感じたりすることもあるかもしれません。そのような時、何が起こっているのか、どのように対処すべきなのかを知ることは、皆様の安心につながります。
東京都江東区に拠点を置くリーリエ行政書士事務所は、これまで多くの20代から40代の男性・女性の皆様の多様なご相談に真摯に向き合ってまいりました。私たちは、行政書士という専門職への信頼を大切にし、皆様が安心してサービスを利用できるような情報提供を心がけています。
この記事では、行政書士に課せられる「懲戒処分」について、その種類や具体例、そしてもし依頼している行政書士に対して不安や疑問を感じた場合の対処法、さらには依頼前に確認すべきポイントまで、法律の知識がない方でも分かりやすく解説いたします。この記事を読み終える頃には、行政書士との関係で疑問や不安を抱えることなく、安心して専門家のサポートを受けられるようになるはずです。
行政書士の「懲戒」とは?その種類と重さについて
行政書士は、法律に基づく国家資格であり、その業務は国民の権利義務や事実証明に関する書類の作成など、社会的に重要な役割を担っています。そのため、行政書士には高い倫理観と専門性が求められ、その業務の適正を保つために、行政書士法という法律によって厳しく規律されています。もし行政書士がその職務上の義務に違反したり、品位を損なうような行為をしたりした場合、懲戒処分という行政上の罰則が科されることがあります。
行政書士に対する懲戒処分は、行政書士法によって明確に定められており、その違反行為の重さによっていくつかの種類に分かれています。これらの処分は、行政書士の品位と信用を守り、依頼者様が安心して行政書士に業務を依頼できるようにするための制度です。
主な懲戒の種類は、以下の3つです。
- 戒告(かいこく) これは最も軽い懲戒処分です。戒告とは、行政書士に対して、その違反行為を戒め、将来的に同様の行為を行わないよう注意を促すものです。書面で行われることが一般的で、具体的な業務の制限や資格の停止を伴うものではありませんが、行政書士としての信用に影響を与える可能性があります。例えば、軽微な書類作成の不備や、依頼者への説明不足などが戒告の対象となることがあります。
- 2年以内の業務の停止 戒告よりも重い処分が、2年以内の業務の停止です。この処分を受けた行政書士は、指定された期間中、行政書士としての業務を一切行うことができません。依頼者様との新規の契約締結はもちろん、既存の業務の遂行も停止されるため、業務の遅延や中断といった影響が生じます。この処分は、例えば、依頼された業務を長期間にわたって放置したり、不適切な方法で業務を行ったりした場合などが対象となります。業務停止期間が明ければ、再び行政書士として活動することは可能ですが、依頼者様からの信頼を取り戻すことは容易ではありません。
- 登録の取消し これは最も重い懲戒処分であり、行政書士としての資格を永久に失うことを意味します。登録の取消し処分を受けた行政書士は、二度と行政書士として活動することはできません。この処分は、極めて悪質な違反行為や、行政書士としての職務を著しく逸脱した行為に対して科されます。例えば、依頼者から預かった金銭を横領したり、虚偽の書類を作成して不正な申請を行ったりするなど、社会的な信用を大きく損なう行為がこれに該当します。登録の取消しは、行政書士にとって職業人生の終わりを意味する、非常に重い判断です。
これらの懲戒処分は、行政書士会からの報告や、依頼者様からの苦情申立てを受けて、行政書士を監督する国の機関が判断し、決定します。懲戒処分が下された行政書士の情報は、原則として、日本行政書士会連合会のウェブサイトなどで公表されるため、誰でも確認することが可能です。この制度があることで、行政書士は常にその職務に責任を持ち、適正な業務を行うよう努めています。
「こんな行政書士は懲戒されるかも?」具体的なケースを解説
行政書士に対する懲戒処分は、具体的にどのような行為に対して科されるのでしょうか。ここでは、実際に懲戒の対象となる可能性のある具体的なケースを3つご紹介します。これらの事例を知ることは、皆様が行政書士を選ぶ際や、もし依頼中に不安を感じた場合の判断材料になるでしょう。
事例1 依頼された業務を放置・不履行にしたケース
行政書士に業務を依頼したにもかかわらず、その業務を長期間にわたって放置したり、全く着手しなかったり、あるいは約束された期日までに業務を完了させなかったりすることは、懲戒の対象となる行為です。依頼者様は、行政書士に費用を支払い、大切な手続きや問題を解決してもらうために信頼を寄せています。それにもかかわらず、業務が滞ってしまうと、依頼者様は経済的な損害を被るだけでなく、精神的な苦痛や、事業上の大きな支障をきたすことになります。
例えば、
- 会社設立の許認可申請を依頼したのに、行政書士が申請書類を提出せず、結果として会社の設立が大幅に遅れてしまった。
- 相続手続きを依頼したにもかかわらず、行政書士からの連絡が途絶え、遺産分割協議が進まないまま何ヶ月も放置された。
- 契約書作成を依頼したが、いつまで経っても契約書のドラフトが送られてこず、取引の機会を逸してしまった。
このようなケースでは、依頼者様は行政書士に対して再三の催促を行っても改善が見られない場合、行政書士会に苦情を申し立てることができます。業務の放置や不履行は、依頼者様との信頼関係を裏切る行為であり、行政書士としての職務懈怠とみなされ、業務停止などの懲戒処分に繋がる可能性があります。
事例2 秘密を守らなかったケース
行政書士は、その職務上、依頼者様の非常に個人的な情報や、企業の機密情報に触れる機会が多くあります。行政書士法には、行政書士が職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという守秘義務が明確に定められています。この守秘義務に違反し、依頼者様の秘密を第三者に漏らしたり、業務外で利用したりする行為は、極めて重大な違反であり、懲戒処分の対象となります。
例えば、
- 依頼者様から聞いた個人的な情報を、許可なく他人に話してしまった。
- 企業の許認可申請で得た機密情報を、別の競合他社に漏洩してしまった。
- 相続の相談内容を、無関係な第三者に話してしまい、依頼者様の家族関係に悪影響を与えた。
これらの行為は、依頼者様のプライバシーや企業の利益を著しく侵害するものであり、行政書士としての信用を失墜させるものです。守秘義務違反は、行政書士の職務に対する根幹を揺るがす行為であるため、重い懲戒処分、場合によっては登録の取消しに繋がる可能性もあります。依頼者様は、行政書士に安心して情報を開示できるよう、守秘義務が徹底されていることを確認することが重要です。
事例3 不当に高額な報酬を請求したり、不正な方法で業務を遂行したケース
行政書士が、サービス内容に見合わない不当に高額な報酬を請求したり、あるいは違法または不正な方法で業務を遂行したりすることも、懲戒の対象となります。行政書士の報酬は自由化されていますが、社会通念上不当に高額な請求は問題視されます。また、法律や倫理に反する形で業務を行うことは、行政書士としての存在意義を揺るがす行為です。
例えば、
- 簡単な書類作成業務に対し、一般的な相場をはるかに超える高額な報酬を請求し、依頼者様が不審に思った。
- 許認可申請において、虚偽の書類を作成したり、事実と異なる内容を記載して申請を行うよう依頼者様に促したりした。
- 依頼者から預かった金銭を、正当な理由なく自己の目的のために流用した。
- 行政書士の業務範囲を超えて、弁護士法に抵触するような法律事務(例えば、調停や訴訟の代理業務など)を行った。
これらの行為は、行政書士としての品位を著しく損ない、社会的な信用を失墜させるものです。特に、不正な方法での業務遂行や金銭の不正流用は、登録の取消しといった最も重い懲戒処分に直結する可能性が高いです。行政書士は、常に法令を遵守し、公正かつ誠実に職務を遂行する義務があります。依頼者様は、費用について不明な点があれば必ず事前に確認し、不審な業務の進め方を提案された場合は、注意深く対応することが求められます。
もし依頼している行政書士に不安を感じたら?解決への対処法
もし、現在依頼している行政書士に対して不安や疑問を感じたり、トラブルの兆候が見られたりした場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。感情的にならず、冷静に段階を踏んで対応することが、問題解決への近道です。ここでは、具体的な対処法をステップごとに解説いたします。
ステップ1 まずは行政書士本人に確認を
不安や疑問を感じた場合、最初に行うべきは、依頼している行政書士本人に直接確認することです。多くのトラブルは、依頼者様と行政書士の間でのコミュニケーション不足や認識のズレから生じているため、直接対話することで解決できる可能性が高いです。
ポイント
- 冷静に、具体的な事実に基づいて質問する: 感情的にならず、「〇〇について、現在の状況を教えていただけますか?」「〇〇の費用について、もう少し詳しく説明していただけますか?」といったように、具体的な事実と疑問点を明確に伝えましょう。
- 不明な点は徹底的に質問する: 費用や納期、業務内容など、少しでも不明な点があれば、納得できるまで質問することが大切です。後から「知らなかった」とならないよう、疑問点はその場で解消するよう努めましょう。
- 書面での記録を心がける: 電話で話した内容も、後で振り返れるように日時、相手の返答内容、ご自身の質問内容などを詳細にメモに取っておくことをお勧めします。可能であれば、電話で話した内容を簡潔にまとめたメールを、行政書士に送信し、確認の連絡を入れておくことも有効です。これにより、「言った」「言わない」のトラブルを防ぐ証拠となります。
この段階で、行政書士が誠実に対応し、疑問点が解消されれば、問題は解決に向かうでしょう。
ステップ2 行政書士会に相談する
行政書士本人との話し合いで解決しない場合、または行政書士が話し合いに応じてくれない場合は、当該行政書士が所属している地域の行政書士会に相談することができます。各都道府県には行政書士会が設置されており、そこには依頼者からの苦情を受け付け、行政書士の指導や、依頼者と行政書士の間での調停を行う窓口が設けられています。
ポイント
- 行政書士会は、行政書士の指導・監督を行う機関: 行政書士会は、行政書士の業務の適正を確保し、依頼者の保護を図るために設置されています。苦情相談窓口では、依頼者様からの訴えを聞き、必要に応じて当該行政書士に事情聴取を行うなどして、問題解決に向けた指導や助言を行います。場合によっては、行政書士会が間に入って、当事者間の調停を試みることもあります。
- 相談に必要な資料を準備する: 相談の際には、これまでの経緯をまとめたメモ、行政書士との間で交わした契約書、見積書、行政書士とのやり取りの記録(メール、手紙など)、支払いに関する書類など、関連する資料をできるだけ多く準備していくと、スムーズに相談を進めることができます。
行政書士会に相談することで、行政書士側も事態を重く受け止め、問題解決に前向きになる可能性があります。
ステップ3 懲戒情報の確認方法
もし、依頼しようとしている行政書士や、現在依頼している行政書士について、過去に懲戒処分を受けていないか不安に感じた場合、その情報を確認する方法があります。
- 日本行政書士会連合会のウェブサイト: 日本行政書士会連合会では、懲戒処分を受けた行政書士の情報をウェブサイト上で公表しています。氏名、登録番号、処分内容、処分年月日などが記載されていますので、依頼前に確認したい行政書士の情報を検索してみることができます。
- 各都道府県の行政書士会のウェブサイト: 日本行政書士会連合会のウェブサイトで全ての情報が網羅されているわけではない場合もありますので、当該行政書士が所属する都道府県の行政書士会のウェブサイトも確認してみると良いでしょう。
これらの情報を確認することで、過去に問題を起こした行政書士かどうかを判断する材料の一つとなります。ただし、懲戒情報が公開されていないからといって、全ての問題がないというわけではありません。あくまで参考情報として活用し、総合的に判断することが大切です。
まとめ 安心して行政書士をご利用いただくために
行政書士は、皆様の生活やビジネスを円滑に進める上で、非常に頼りになる専門家です。しかし、残念ながらごく稀に行政書士との間でトラブルが発生してしまうこともあります。そのような時、何が起こっているのか、どのように対処すべきなのかを知ることは、皆様の安心につながります。
この記事では、行政書士に課せられる「懲戒処分」の種類や具体例、そしてもし依頼している行政書士に対して不安や疑問を感じた場合の対処法、さらには依頼前に確認すべきポイントまで、詳しく解説いたしました。
最も大切なことは、トラブルを未然に防ぐための努力です。行政書士に依頼する際には、費用や業務内容について事前に十分な説明を受け、納得できるまで質問すること。また、業務の進捗状況についても定期的に確認し、少しでも疑問や不安を感じたら、すぐにコミュニケーションを取ることが重要です。
もし、行政書士との関係で少しでも不安や疑問を感じたら、一人で抱え込まず、まずは本記事でご紹介した解決プロセスを参考に、ご自身で行動を起こしてみてください。そして、ご自身での解決が難しいと感じた際には、お気軽にリーリエ行政書士事務所にご相談ください。
私たちリーリエ行政書士事務所は、東京都江東区で長年にわたり、地域の皆様の法的課題解決をサポートしてまいりました。私たちは、行政書士という専門職への信頼を大切にし、皆様が安心してサービスを利用できるような情報提供と、もしもの際の適切なサポートを心がけています。どんな些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にお問い合わせください。